エアコンは畳数で選ぶのはNG
近年は猛暑の影響もあり、1年間で1000万台近くのエアコンが販売されます。
エアコンを購入するときに、畳数表示を参考にする方が多いと思いますが、実は新しい住宅ほど畳数は当てになりません。
今回はエアコンの畳数表示の仕組みと、本当のエアコンの選び方について解説します。
正しい畳数を選ぶことでコストを抑えつつ、快適な環境を得ることが可能です。
エアコンの畳数表示
エアコンの性能は、能力値(kW)と畳数表示の二種類があります。
kWについては、排出したり取り込むことができる熱量を指す定量的な基準ですが、畳数表示は実は曖昧です。
そもそも、畳数表示は1964年に制定されたJIS規格(C9612)をもとに計算されています。
当時は無断熱が一般的だったにもかかわらず、気密断熱が重視されている現代でも同じ基準で表示されているのです。
国土交通省の調査によると、現代では完全な無断熱の建物は4割に減っており、6割は断熱施工がされています。
つまり、畳数表示で選ぶと、6割の建物にとっては、過剰な性能になると言えます。
断熱環境の違い
1964年当時は、断熱や気密という考えはほとんど存在していませんでした。
高度経済成長期の真っただ中で、人口も増え続けていたことから、とにかく早く多く建てることが重視されていた時代です。
1980年に初めて、省エネルギー基準(旧省エネ基準)が制定され、断熱工事という考え方が始まりました。
1999年に、省エネルギー基準(次世代省エネ基準)が改正され、現在のスタンダードである断熱等級4が広まりました。
実際にどの程度断熱環境が変わったのか、断熱等級を決めるUA値で比較します。
当社でリノベーションを行う住宅は、無断熱の場合、UA値で4程度になることが多いです。
UA値は外皮平均熱還流率と言い、簡単に言えば、屋内からの熱の逃げやすさを示す指標です。
現行の新築住宅のスタンダードである断熱等級4は、UA値0.87なので、実に5倍以上も断熱効果が上がっていることになります。
本当のエアコンの選び方とは・・・
ここでは、具体的に数値を用いて、必要なエアコン能力値を詳細にシミュレーションしたいと思います。
建築面積20坪の2階建て木造住宅、一般的な戸建て住宅として、以下の数値を用います。
- UA値=0.87(W/㎡・K)
- 外皮面積=350(㎡)
- 気積=250(㎥)
- 換気回数=0.5(回/h)
熱損失量=UA値×外皮面積+容積比熱×気積×換気回数
=0.87*350+0.35*250*0.5
=348.25(W/K)
仮に内外の温度差が20度とすると、温度差による熱損失は、348.25*20=6965(W)となります。
そのため、家全体(80畳)の熱損失を、たった1台の7.0kWの20畳用エアコンで賄うことができるのです。
とはいえ、近年はリビングとキッチンを一体化したLDKにすることが多く、調理器具の熱で冷房効率が下がることもあります。
他にも玄関とリビングに間仕切りが無い場合は、開け閉めの度に外気が入ってくるため、熱が逃げやすいです。
気密が取れていない場合、隙間風による熱損失も考慮すべきです。
日当たりや、風の強さ、地域差によっても異なるため、結局のところ個々の環境に応じて判断することが重要と言えるでしょう。
エアコンの選定は設計図をもとに環境を考慮して選定するべき
いろいろなお客様が訪れる家電量販店では、簡易的な畳数表示で機種を選ぶのも良いと思います。
ですが、オーバースペックにしないためには、できれば設計図をもとに断熱性能や日射取得、熱源の有無を踏まえて、機種を選定するべきです。
そういった意味では、建築会社や工務店に依頼するのも良い方法だと思います。
ちなみに、メーカーによるエアコンの性能差はほとんどありませんが、機能については違いがあります。
例えばパナソニックではほぼ全てのシリーズで、アプリによる遠隔起動に対応していますが、他メーカーではオプション扱いの場合もあります。
使い方を考えながら、断熱を考慮した上で、適切な性能の機種選定が重要です。